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静岡地方裁判所 平成3年(ワ)172号 判決

原告

平岡久子

平岡伸浩

右両名訴訟代理人弁護士

冨山喜久雄

被告

甲野一郎

右訴訟代理人弁護士

河村正史

主文

一  被告は、原告らに対し、各金三九三七万二三六四円宛て及びいずれもこれに対する昭和六三年四月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らのその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告らの請求

被告は、原告らに対し、各金五六〇一万八一五二円宛て及びいずれもこれに対する昭和六三年四月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一本件は、殺人事件の被害者の遺族から提起された加害者に対する損害賠償請求であり、事件当時加害者が心神喪失の状態にあったか否か、また、加害者が過失により一時の心神喪失を招いたか否か等が争点となった事案である。

二争いのない事実

1  事件の発生

被告は、昭和六三年四月二三日午後一一時五〇分ころ、白いヘルメットを被り、果物ナイフを所携のうえ、静岡市〈番地略〉の平岡多吉(以下「亡平岡」という。)方に押し入り、応対に出た亡平岡と揉み合ったすえ、亡平岡の左胸部を右果物ナイフで刺して逃走した(以下「本件事件」という。)。

亡平岡は、救急車で静岡日赤病院に搬送されたが、搬送途中の同月二四日午前〇時三一分ころ失血により死亡した。

なお、亡平岡及びその家族である原告らは、被告と一面識もなかった。

2  原告らと亡平岡との関係及び相続

亡平岡は、昭和一五年四月二日生で、本件事件当時、満四八歳であった。

原告平岡久子は、亡平岡の妻、原告平岡伸浩は亡平岡の子であり、他に亡平岡の相続人はいないから、原告らは、法定相続分に従い、亡平岡の被告に対する損害賠償請求権を各二分の一宛て相続した。

三争点及び争点についての当事者の主張

1  本件の主たる争点は、

(一) 本件事件当時、被告が心神喪失状態であったか否か。

(二) 仮に、本件事件当時、被告が心神喪失状態であったとした場合に、被告が過失により一時の心神喪失(民法七一三条ただし書)を招いたものであるか否か。

(三) 亡平岡及び原告らに生じた損害の額

である。

2  争点(二)についての原告の主張は次のとおりである。

仮に、被告が、本件事件当時アルコール離脱症候群に相当する精神状態にあって心神喪失の状態であったとしても、以下のとおり、その過失により一時の心神喪失を招いたものである。

被告は、遅くとも昭和六〇年ころからアルコール依存症となり、再三治療を試みたものの治癒しないままで推移していたところ、本件事件直前の昭和六三年四月一九日にも、静岡県立病院養心荘(以下「養心荘」という。)で受診し、閉鎖病棟で入院治療する機会を得たにもかかわらず、開放病棟での入院治療に固執して、その治療機会を自ら放棄し、その後、アルコール依存症の離脱症状を出現させて、本件事件当時、心身喪失状態となったものである。被告は、昭和六一年六月ころにも、アルコール依存症による幻覚症状を起こし、隣室にガラス窓を壊して侵入するという刑事事件を起こした経験があり、適切な入院治療を受けなければ心神喪失状態を招くことについて十分予見可能であったのに、自己の症状を安易に考えてこれを受けなかったもので、心神喪失を招来したことにつき過失があることは明らかである。

3  争点(一)及び(二)についての被告の主張は次のとおりである。

(一) 被告は、本件事件当時、アルコール離脱症候群(大離脱)に相当する精神状態にあり幻覚、妄想、見当識障害、軽度の意識障害に陥っていたもので、心神喪失の状態にあった。

(二)(1) 民法七一三条ただし書は、いわゆる原因において自由な行為を定めたものであるが、個人責任、意思責任を基本とする不法行為責任の原則に照らせば、同条ただし書でいう過失の内容は、単に心神喪失を招くことについての過失ではなく、その結果不法行為を行うことについての過失であることを要するというべきである。

しかるところ、被告は、飲酒のうえで、昭和五三年に自動車窃盗、昭和六一年五月に、器物損壊、住居侵入の刑事事件を起こしたことがあるも、いずれも心身喪失状態に陥ったうえでの犯行であるかどうかは明らかでなく、しかもいずれも人の生命身体に対する攻撃行為を内容とするものではない。したがって、被告が飲酒して心神喪失状態となり、その結果人の生命身体に対する攻撃行為を行うという蓋然性はなく、また、その予見可能性があったものとは認められない。

(2) 仮に、民法七一三条ただし書の過失の内容が、心神喪失を招くこと自体の過失であるとしても、以下に述べるように、被告には、心神喪失を招いたことについての過失は認められない。

すなわち、前述のように、被告は飲酒下で二度刑事事件を起こした経験があるが、いずれも心神喪失状態の下での犯行であるか否かは不明であり、飲酒の結果心神喪失を招くことについての予見可能性はそもそも存しない。また、被告は、昭和六三年二月以降、飲酒を継続することによる生活の破綻をおそれて静岡県立総合病院、養心荘などで受診し、また、断酒すると幻覚を招く不安があったことから節酒を試みていたところ、同月二一日に養心荘で受診した際に精神安定剤、睡眠薬などの処方を受けて服用し、同月二三日に出現した幻視から逃れるためジョギングするなどして、懸命に幻覚、幻視、幻聴などのアルコール離脱症状と戦っていたものである。本件事件直前に入院治療に踏み切っていれば、本件事件を避けられたはずであるということは結果論に過ぎず、心神喪失を招いたことについて被告には過失はない。

第三争点に対する判断

一争点(一)について

1 右第二の二の争いのない事実、〈書証番号略〉、証人大原健士郎の証言及び弁論の全趣旨を総合すれば、本件事件に至る経緯等につき次の事実が認められる。

(一) 被告は、満二〇歳時の昭和五〇年ころから、ウィスキーをボトル三分の一程度、毎日のように飲むという飲酒傾向が始まり、次第に酒量が増えて昭和六一年五月ころには、ウィスキーをボトル一本ほど毎日飲み、飲酒と睡眠を繰り返すというような生活をするに至ったが、この間、昭和五三年ころに酩酊のうえ自動車を窃取運転して逮捕されるということがあり、また、昭和六〇年ころには、酒が切れるとぞくぞくとした感覚や手指の振戦が生じ、飲酒すると消失するような症状や、酩酊時には記憶欠落が生ずるなどの症状が現れるようになった。

(二) 被告は、それまでにも断酒を試みることがあったが果たせないでいたところ、昭和六一年六月ころに断酒をした際、最終飲酒後五、六時間経過したころから、身体全体に震えが起こって不眠状態となり、目も充血して刺すような痛みが生ずるようになった。この震え自体は、二、三日で消失したが、四、五日後には居住するアパートの隣室から声が聞こえると感ずる幻聴などの症状が現れ、そのために窓ガラスを壊して隣室に侵入するという刑事事件を起こした。右事件後、東北大学医学部付属病院精神科で受診したところ、右幻聴について「酒を急にやめたための幻覚」との説明を受け、精神安定剤を処方されて、その後約一年間外来通院をして治療を受けた。右通院期間中、幻聴の再現はなく、飲酒量も、時々ウィスキーの小瓶一本ほどを飲む程度にまで減少したが、昭和六二年五月ころから、生活上の不満を契機として従前のような大量の飲酒を再び始めるようになった。

(三) その後、昭和六二年一〇月に被告は静岡に転居して就職し、断酒もして真面目に勤務する状態がしばらく続いたが、勤務先が正月の休業期間に入った昭和六二年一二月二九日から再度飲酒を始め、大晦日から昭和六三年の正月にかけて、部屋にこもったまま、毎日ウィスキーをボトル一本程度飲み、泥酔しては入眠し、目覚めては再び飲酒をするという生活を繰り返して、勤務先の始業日である同年一月五日以降も出勤しなかったため解雇された。そこで、被告は、同年二月一日、生活を立て直すべく、静岡県立総合病院神経内科で受診して、アルコール依存症の専門医がいる養心荘を紹介され、同年四月一九日に同病院で受診して、開放病棟において入院治療を受けることを希望したが、閉鎖病棟でないと入院できないといわれたため、結局、入院治療することをしなかった。

(四) 被告は、そのころは、断酒をした場合には、幻覚などの症状が出現するのではないかとの不安があったため、ビール一本とウィスキーを水割り一、二杯ほどを毎日飲む程度に節酒していたが、手指の振戦が出現し、夜は不眠に苦しむようになり、精神的にも不安定となった。被告は、右のような症状が生じたことから、同月二一日、再び養心荘で受診し、精神安定剤、睡眠薬などを処方されたが、その服薬にもかかわらず振戦は増悪して次第に粗大となり、同日の夜には大量の寝汗をかくに至った。

(五) 同月二三日、被告は午前六時ころ起床したが、身体中に強い掻痒感を覚え、自室内の綿屑や糸屑がダニに見えるようになった。同日の夕方、被告がジョギングをして自室に帰ると、女性の声が聞こえるように感ずる幻聴があり、自分の陰口をいわれていると考えた被告は、そのためウィスキーを飲み始めたが、そうすると、自室内に、兄やその子供がいるような幻視が生じ、また幻聴で叔母の声がした。被告は、次第に皆に嫌悪されているように感じ、やがて誰かに襲われるのではないかと考え出し、自室内にオートバイや洗濯機でバリケードを作って外部から人が入れないようにして飲酒し続けていたが、襲われる前に逃げようと考えるに至り、同日午後一一時五〇分近くに、護身用のつもりで果物ナイフを持ち、ヘルメットを被って室外に出た。

そして、同日午後一一時五〇分ころ、被告は、亡平岡方に押し入り、応対に出た亡平岡と揉み合いのすえ、同人の左胸部を所携の果物ナイフで刺して逃走した。

(六) 被告は、さらに同月二四日午前〇時過ぎころ、亡平岡方近くの伴野潔方の裏木戸を破って同人方に侵入し、同方の縁側の窓ガラスを破ったところ、家人に気付かれて一旦逃走しようとしたが、再度、勝手口のガラスを割って同人方に侵入し、家人にナイフを押しつけたが、逆に取り押さえられ、通報により駆けつけた警察官に逮捕された。

(七) 被告は、その後の捜査時において、取調官に対し、本件事件当時のことについては、部屋を出たところからの記憶が欠損しており、僅かに果物ナイフで亡平岡を刺したこと、伴野方の家人により取り押さえられたこと、連行されたパトカーの内部、逮捕直後の警察での取調べの記憶が島状に残存していると供述した。なお、本件事件直後である同月二四日午前一時四五分に行った酒気検査によると、被告の呼気アルコール濃度は一リットルあたり0.15ミリグラムであった。

(八) 被告は、本件事件で勾留中の昭和六三年五月九日、一一日及び一八日に浜松医科大学精神科外来で同大学精神神経科教授大原健士郎の鑑定を受け、その結果、本件事件当時心神喪失状態にあったものとの鑑定を受け、本件事件の刑事処分については不起訴とされた。

2  また、右1の事実と〈書証番号略〉及び証人大原健士郎の証言によれば、次の事実が認められる。

(一) アルコール依存症患者が、断酒した場合、身体からアルコールが消失する過程において、アルコール離脱症状(アルコール離脱症候群ともいう。)と称せられる一連の症状が出現する。

(二) アルコール離脱症状は小離脱と大離脱(または、早期症候群と後期症候群ともいう。)とに分類することができる。

小離脱は、不安、抑うつ感などの不快感情や悪心、戦慄、発汗などの自律神経症状及びこれらを伴う振戦などをその症状とするもので、軽度の離脱症状であり、飲酒することによって消失する。

大離脱は、粗大な振戦、精神運動亢進、幻視や幻聴などの幻覚、意識変容及び自立神経機能亢進などを主特徴とする振戦せん妄症状であり、その前駆症状として、不穏、過敏、不眠、振戦及び食欲低下などが現われ、ついでせん妄状態に移行するもので、その精神状態は、現象的には、精神分裂病における幻覚妄想状態と何ら変わりはない。

(三) 右1の(一)の昭和六〇年ころに被告に生じた酒が切れるとぞくぞくとした感覚や手指の振戦が生じ、飲酒すると消失するような症状は、アルコール依存症の小離脱症状と、また、1の(二)の昭和六一年六月ころ断酒をした際に生じた身体全体の震えや不眠状態に引き続く幻聴などの症状は、大離脱症状と考えられる。さらに、1の(四)の手指の振戦、不眠、精神的不安定などの症状が生じてから本件事件に至るまでの間もアルコール依存症の離脱症状が継続しており、特に本件事件当時、被告は幻覚、見当識障害、軽度の意識障害を有しており、アルコール離脱症状のうちの大離脱に相当する状態にあった。

3  右1及び2の事実、特に本件事件当時、被告がアルコール離脱症状のうちの大離脱に相当する状態にあったこと、大離脱症状の精神状態は、現象的には、精神分裂病における幻覚妄想状態と何ら変わりはないこと、本件事件前後の被告の行動及びその動機が極めて特異なものであることなどの事実によれば、本件事件当時の被告は、行為の結果が違法なものとして法律上非難され、何らかの法律上の責任が生ずるであろうことを弁識し得る知能、すなち不法行為責任を帰せしめるについて、その基礎となるべき判断能力を失っていたものと認められ、心神喪失状態にあったものというべきである。

二争点(二)について

1 民法七一三条ただし書の文言に照らせば、同ただし書にいう「故意又ハ過失」が、心神喪失の際に「他人ニ損害ヲ加」えるに至ったことについての故意又は過失を指すものではなく、心神喪失を招いたことそれ自体についての故意又は過失を指していることは明らかというべきである。

右のように解するとすれば、確かに、加害者は加害行為についての直接の故意又は過失が無くとも不法行為責任を負うこととなり、民法の基本原則とする過失責任主義と背馳する面が生ずることになるが、そもそも不法行為責任は、刑事責任と異なり、社会全体からする非難、制裁という機能を果たすものではなく、被害者の損害の填補を中心として、当事者間の公平の実現を図るものであり、その面から民法自体においても過失責任主義を修正した規定(七一七条参照)も存するのであり、したがって、右の如き解釈が特異なものと解することはできない。かえって「故意又ハ過失」が、心神喪失の際に「他人ニ損害ヲ加」えるに至ったことについての故意又は過失を指すものと解するならば、結局加害者は民法七〇九条に基づいて通常の不法行為責任を負うことに帰し、民法七一三条ただし書の規定を無意味ならしめることになる。

2  右一の1及び2の事実及び証人大原健士郎の証言並びに弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一)  アルコール依存症患者を治療するに際し、アルコール離脱症状を出現させないためには、アルコールと交差依存性のある精神安定剤を投与したうえで断酒させることを要し、医療機関の厳重な管理の下でこれを行うことが必要である。

(二)  しかるに、被告は、通院のうえで医師の診断を仰ぎ、投薬は受けたものの、閉鎖病棟に入院することを嫌い、右のような医師の管理の下での十分な治療を受けることをせずに、自己の判断でいわば素人療法的にアルコール依存症の治療を行おうとして節酒を試み、その結果、アルコール離脱症状のうちの大離脱症状を招来させて、心神喪失の状態に陥ったものである。

(三)  被告は、過去に断酒により幻覚が生ずるなどのアルコール離脱症状を呈したことがたびたびあるほか、昭和六一年六月に断酒から幻覚が生じ隣室に窓ガラスを壊して侵入するという刑事事件を起こした際には、医師から酒を急にやめたため幻覚が生じた旨の説明を受けており、また、このような経験から、本件事件直前においてもアルコール離脱症状による幻覚が生ずることをおそれて、断酒に踏み切らずに節酒するにとどめていたもので、安易に断酒、節酒した場合には、幻覚等の症状が生じ、これが嵩じて自己の行為についての判断能力を失うに至る可能性があることについては、十分に予見が可能であった。

3 右2の事実によれば、被告は、本件事件当時に心神喪失を招いたことにつき過失があったものと認められる。

三争点(三)について

1  慰謝料(請求額 合計金六〇〇〇万円)

右第二の二の1及び右一の1の本件事件の態様、殊に深夜全くの面識ない被告によって住居に押し入られたうえ、何ら落ち度もない亡平岡が突然殺害されたという本件事件の特殊性、その他本件に顕れた諸般の事情を勘案すれば、本件事件によって亡平岡の妻及び子である原告らが被った精神的苦痛に対する慰謝料の額としては、各金二〇〇〇万円宛てとすることをもって相当と認める。

2  逸失利益(請求額 金五一〇三万六三〇五円)

〈書証番号略〉、原告平岡久子及び同平岡伸浩の各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、亡平岡は、静岡市役所清掃課に勤務し、死亡時の前年である昭和六二年時には金六〇三万二八六七円の給与収入を得ていたこと、静岡市役所の定年退職年齢は六〇歳であり、したがって亡平岡は平成一三年三月末日をもって定年退職する予定であったこと、同居家族の原告平岡伸浩は本件事件当時、既に大学を卒業して会社員として勤務中であったことが認められる。

右事実によれば、亡平岡の逸失利益のうち、死亡時から静岡市役所を定年退職する予定であった時期までの一二年間については、右給与収入の額金六〇三万二八六七円を基礎に、生活費の割合としてその四割を控除し、ライプニッツ方式によって中間利息を控除して(一二年間の係数8.863)算出される三二〇八万一五八〇円と認められる。

(算式) 6,032,867×(1−0.4)×8.863

=32,081,580

また、亡平岡が静岡市役所を定年退職した後については、就労可能年数を満六七歳までの七年間とし、昭和六二年賃金センサス第一巻第一表による産業計、企業規模計、学歴計の年齢六〇歳ないし六四歳の男子労働者の平均賃金年額である金三五一万五三〇〇円を基礎に、生活費の割合としてその五割を控除し、ライプニッツ方式によって中間利息を控除して(死亡時から六七歳時までの一九年間の係数12.085、死亡時から定年退職時までの一二年間の係数8.863)算出することが相当であり、右金額は五六六万三一四八円である。

(算式) 3,515,300×(1−0.5)×(12.085−8.863)

=5,663,148

したがって、亡平岡の死亡による逸失利益は、合計金三七七四万四七二八円であり、原告らは、法定相続分に従い各金一八八七万二三六四円宛てを相続したものと認められる。

3  葬祭費(請求額 金一〇〇万円)

〈書証番号略〉及び弁論の全趣旨によれば、本件事件と相当因果関係にある亡平岡の葬祭費は金一〇〇万円と認めるのが相当であり、原告らは法定相続分に従い右金額を各金五〇万円宛て負担したものと認める。

4  以上によれば、原告らは被告に対し、各金三九三七万二三六四円宛ての損害賠償請求権を有することが認められる。

第四結語

よって、原告らの請求は、被告に対し各金三九三七万二三六四円宛て及びいずれもこれに対する本件事件当日である昭和六三年四月二四日から支払済みまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があり、その余は理由がない。

(裁判長裁判官荒川昂 裁判官石原直樹 裁判官森崎英二)

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